21/11/2025
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時と場をサーフする
Surfing Through Time and Space
私たちが今、Takanawa Gateway NEWoMan に新しく開いた Saturdays NYC は、「どこに属しているのか」という問いからはじまった。
ニューヨークという出発点から15年以上、日本という地で呼吸し続け約12年。文化や習慣と混ざり合い、ブランドのアイデンティティは進化し続けていると感じる。もはやそれは「ニューヨークのもの」でも「日本のもの」でもなく、双方の境界がぼやけ、溶けていく過程そのものが、新しい「場」の物語となっているとも言える。
空間はブランドの過去と未来を含む“今”を映す場である。
私たちが目指す場は、決して装飾空間ではなく、彼らが編み上げた時間と人の経験を纏う空気のような存在である。
「境界線をぼやかす」ということを意識した。
外と内、商業と生活、設計者と施主、過去と未来──それぞれの間に引かれてきた線を少しずつ曖昧にしていく。計画された合理性の中に、偶然や時間の痕跡が入り込む余地を残すこと。それが生きた空間へと変化させる力になる。
床には厚さ3cmのコンクリート平板をグリッド状に敷き詰めた。その整然さは都市の秩序を象徴しつつ、素材特有の粗さが光や影をやわらかく受け止める。
そのコンクリートと呼応するように配置されたのは、再利用された建築型枠用のメタルフォーム。使い込まれたスティールに刻まれた傷や塗装の剥がれは、時間が残した痕跡であり、均質を拒む個体差が空間に生命感を与えている。
そして、それら人工的な素材を包み込むように添えられたのが、北米の大地で150〜200年をかけて育ったウェスタンレッドシダー。
海を越え、時を重ねてきたこの木は、Saturdays NYC が辿ってきた旅路そのものを象徴している。
ニューヨークのブランドが日本で根を張り、さらなる地域へと広がっていく──この流れそのものをレッドシダーの重なりで表現するべく、斜め貼りという手法を用いた。
個性豊かなレッドシダーの斜め貼りが、空間全体に“揺らぎ”と“指向性”を与え、時間が流れ出すような印象をつくることを意図した。
さらに、天井や柱の一部には銅の粉を混ぜこんだ塗料を施した。
その作業は私たち設計者と施主が現場に立ち、手を動かしながら共に行ったものだ。完成されたものを単に「渡す」のではなく、互いの境界が交わる場所として共に“つくる”。効率の美学を越えて、そこに生まれるひとつの曖昧な領域──それがこのプロジェクトの本質である。
結果として、Takanawa Gateway NEWoMan の4階という人工的な条件の中で、内部と外部、共用と専有、人と空間がゆるやかに溶け合う場となった。
ここでは通り抜ける風や人の気配が空間に染み込み、訪れた人ごとに異なる時間が流れるように設計を試み、空間が「所有される」ものではなく、「共有される」ものになる瞬間を私たちは目指した。
誰もが簡単に美しい空間をつくれる時代だからこそ、私たちは「物語としての設計」—情景—を重ねたいと思う。素材や工程のひとつひとつに内在する時間、人の手が介在する痕跡、そしてブランドと場所が交わる瞬間──それらが重なることで、はじめて「場」は呼吸を始める。
境界線をぼやかすこと。それは不明瞭さを許容することでもある。
明確に分けることで失われてきた「人と時のあわい」を再び取り戻すとき、空間はただ存在するだけでなく、生きた体験を生み出す媒介となる。Saturdays NYC がこれからも進化を続けるように、この空間もまた変化し、時間とともに新しい意味を見つけ続けていくだろう。
Photo by DAISUKE SHIMA