10/06/2026
江戸の二十四時間 / 著者・林美一 / 河出書房新社
止まっていた時の流れ
一日24時間。これは現代人にとって至極当たり前のことだろう。小さい頃ダラダラと過ごしていると親にこのことを口酸っぱく怒られたものだし、今は自分が息子に口酸っぱく言い聞かせている。けれどこの1日24時間という概念はわが国の会石後の明治以降に浸透したものだというからまだ歴史は浅いのだ。それ以前の江戸時代は、不定時法という日の出と日没を基準に昼と夜を6等分する時刻制度に準っていた。だから夏の朝6時は明るいのに、冬の朝6時は暗いということはなく、人間の行動自体が日の出と日没に準じていたようだ。これは生命体として実に理にかなったある種の習慣のように思える。信州・上田に移住してから早寝早起きを習慣にしているが、冬は明け方まで暗いのでなかなか起きられないが、明け方が明るくなる初夏や夏は自然と早く起きれるということを身をもって証明できている。
さて、なぜこんな時間について話をしているのかといえば、本書『江戸の二十四時間』を読んだことがきっかけになっているからだ。江戸の一日は明け六ツの鐘の音とともに始まり、大奥の御錠口も長屋の木戸もこの時刻に開く。今の午前六時ごろ、将軍の起床する時間でもある。老中などの重職は午前十時には登城し、そのころには銭湯や本屋が開く。大江戸八百八町に生きた、あらゆる階層の人びとの、息遣いまでが聞こえるような昼と夜、時々刻々の生態を、時代考証家の林美一が活写した本書。様々な役職や位の人たちの24時間の生き様がこと細やかに、そしてその所作がどのような意味を成しているのかということが丁寧に綴られているので、まるで、何かの浮世絵の世界が時を超えて頭の中で動き出しているような感覚へと誘われることだろう。
時間というのは人間が生きる中で生まれたものだということを改めて気づかせてくれる一冊だ。
※こちらは実店舗とオンラインショップでご購入可能です。
#信州上田
#クラフトの思想
#読書と思索
#生活の美学